2020年12月25日金曜日

それはお前の行動が甘かったからだ

磯野さんと水野さんの対談をログミーで読み直していた。

https://logmi.jp/business/articles/322304

いろいろと「うっ」と思う記事である。公開されてから1年くらい経つが、いまだにタイムラインにも流れてくる。示唆に富む上質な対話だ。

最近ぼくが気にしているのは連載第2回のこの部分である。ちょっと長いが引用する。



磯野:「どうやってやせますか?」みたいなのがいっぱい出てきたあとに、お洒落なランチの話とかがすごく出てきて、ものすごく両極端に引っ張られる社会です。

だから、具体例を出して申し訳ないですけど、(バラエティタレント/ファッションモデルの)ローラさんのInstagramを見ていると、食べ物の写真がいっぱい出てくるんです。

「今日はビタミンカラー満載のサラダをいっぱい食べちゃったよ」「みんな、いっぱい食べたほうがいいよ!」と言ったようなコメントが書かれていて、でも、ローラさんはBMIが18とかなんですよ(笑)。

彼女を責めたいわけではまったくないんですが、「正しいやり方さえすれば、いっぱい食べても素敵な体型でいられる」というメッセージというのは、ものすごく出ていると思うんですよね。「ライザップ」とかはすごく典型的だったと思うんですけど、あれってけっこう「食べなさい」「やせるためには食べるんです」みたいに言いますよね。

そうすると何が起こるか。やせようとしたけど結局うまくできなくて、例えば「摂食障害になっちゃった」とか「リバウンドしちゃった」みたいになったとします。

すると「それはあなたのやり方、あるいは、あなたの性格に問題があったのであって、正しいやり方さえすればこういう体型は得られるんですよ」というメッセージが流される。つまりダイエットに失敗して、きれいな体型にならなかったのはあなたのせい、というわけです。


これを読んだときの「うむむぐぬぬ」感たるやすごかった。

わかる。

わかるのだ。

「正しいやり方さえすればこういう【いい結果】は得られるんですよ」の圧力というのはものすごい。

ぼくはこれに取り込まれているように思う。



ツイッターをやっていると無数に見かける、以下のようなことば。


「8年間がんばって勉強さえすれば大学以降はとてもいい思いを……」


「手洗いマスク三密回避さえすれば感染症禍でも……」


「ツイッターで他人の悪口を言わずに読んだ本の感想だけ言えば日常が……」


これらの言質に共通するのは、後に続く、(だからもしうまくいかなかったらそれはお前の行動の律し方が甘かったからだ)というメッセージだ。


参ったなあ、と思った。ぼくもこういう言い方をたまにしている。




ストーリーを与えて、「これに正しく沿えばうまくいくし、やり方がへただとそりゃあ失敗するだろうさ」と言うやり方。これ、本当に、世の中にあふれている。ぼくも影響を受けている。


でもなー成功とか理想とか夢とかって、「正しいやり方」をしていれば「必ずたどり着く」ものではないんだよな。


偶然の因子のほうがよっぽど大きく作用する。


「成功のカギは、いかに正しい過程を遵守するかだ!」のメッセージが強すぎる社会はしんどいな……。





しんどくならないために、じゃあ、どうすればいいかって?





いや、今の太字がもう、だめなんだろう。「こうすればしんどくならない」という方法を追い求めることは、すでに、(だからもしうまくいかなかったらそれはお前の行動の律し方が甘かったからだ)というメッセージにつながろうとしている。


この話題、奥が深い。ちょっと継続的に考えてみる。


(だからもしうまくわからなければ、それはお前の考え方が足りなかったからだ。)