ぼくは今年44歳になるおじさんである。2003年に医学部を卒業したので、なんと、この4月で卒後19年目に突入する。
まあそれはいいんだけど、ブログ書こう~と思ってブラウザを立ち上げている1秒にふと思った。これだけ時間が流れると、医学部のカリキュラムなんてずいぶん変わっちゃってるんじゃないかな、ってこと。
「ぼくは昔この順番で習いました」は今でも空で言える。6年間の医学部の授業では……
①1年前期~2年前期の1.5年間:「教養」
(医学と関係ないことを学ぶ。自動車免許を取り、バイトに慣れる。必修科目が意外と多いので気を付ける。)
②2年後期~3年前期の1年間:「基礎医学」
(解剖学、組織学、生化学、生理学、医療統計学など。人体の正常を学ぶ。解剖実習がある。)
③3年後期~4年前期の1年間:「応用基礎医学」
(病理学、薬理学、微生物学、統合腫瘍学、免疫学など。やや病気寄りの知識が増える。科学と病院医療の「架け橋」みたいな時期。)
④4年後期~5年前期の1年間:「臨床医学」
(呼吸器内科、循環器内科、血液内科、消化器内科、一般外科、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科、産婦人科、小児科、精神科など。病院内の各科の勉強をする。)
⑤5年後期~6年前期の1年間:「病棟実習」
(基本的に大学病院の中で2週間くらいずつ全ての科を回る。ときどき地域実習と言って、地方の病院に行ったりもする。)
⑥6年後期の半年間:「卒業試験と国家試験の勉強」
(約半年間かけて卒業試験を受ける。たしか30科目くらいある。落ちると卒業させてもらえないことが普通。卒業試験を受けつつ国家試験の勉強もする。)
だいたいこんな感じだった。でも、現代の医学だと、これでは足りないはずなんだよね。
こないだ聞いて驚いたことだが、今の高校生物の教科書には「免疫」の項目があって、そこで覚えるべき項目の中に好中球、Bリンパ球、Tリンパ球、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞などが出てくるという。えっそこまで細かくやるの!? ぼくらが大学で習ったことじゃん! と思った。ぼくのときはたしか白血球・赤血球・血小板の3分類で終わりだったはずなのに。
マンガ『はたらく細胞』のおかげでこれらの分類を苦もなく覚えられるようになったからじゃ……という邪推もあるのだが、ありとあらゆる勉強科目が細かく複雑になっているようにも思う。
というわけで、ネット経由で、今の医学部のカリキュラムをいろいろ調べてみた。昔と比べて変わった点だけをざっとあげてみる。太字が変更点、その下に書いてあるのがぼくの感想である。
・1年半あった教養が1年に短縮。しかも1年後期からけっこう専門的な講義がはじまる
車の免許とるヒマないな バイトしてるヒマないな
・基礎医学の生理系・病理系が1年の後期から2年生いっぱいまでに終わる
これ昔は4年の前期までかけてたヤツだよ! どこを短縮したらそうなるんだよ! 解剖はやらなきゃいけないはずだし……生化学や生理学を高校でやってる分を短縮してんのか? えっ病理は2年目でもうやってるってこと? マジ?
・3年生から4年の前期までの1年半(+一部は2年の後期も使って2年間)、臨床医学をどっぷりやる
まあそういうことなんですよね。そんなに急いで基礎医学終わらせてどうするの、と思ったら、臨床医学が膨大になったからここが増えている。現場の医者であることをやるためのより実践的な医学知識を、過去の倍くらいの時間かけてやらなきゃいけない。あと、大学によるけれど、この時期に統計学をわりと真剣にやるみたい。必要だからなあ。
あ、それと、臨床医学を学び終えるのも昔より1年弱早いです。ということは……?
・4年の前期の終わりから、CBTやOSCEと呼ばれる「ベッドサイドで働くための手技のテスト」が行われ、これに合格するとStudent doctor(学生だけど病院にいていいという資格!?)が得られる
実技ですね。病棟を回る前にしっかり実技をやる。
・4年後期の途中から6年前期まで、1年半ちょっと病院実習
ここが長くなってます。これだね。だから基礎をあっという間に終わらせるんだ。ほんとうに「病院で医者をやるために必要な実習」を伸ばしているんだなあ。基礎を勉強する「学者の時間」が昔よりずっと短い。
・自主性を重んじるって明記してある
これはぶっちゃけ「自習もしないと国家試験なんてぜんぜん受からんし、なんなら実習前のOSCEで落ちるよ」ってことです。まあ医学部生が勉強会とかやりまくってるのは昔もそうだったけど、今は質量というか圧が違う感じだなあ。
以上はぼくが卒業した北海道大学のカリキュラムを見て感じたことなので、大学が違えばやることも違うとは思います。でもひとつ言えることがある。どう考えても今の若者のほうが優秀だ。私たちの時代とは比べものにならない。
となると、今のぼくたちは、学生時代以上に(もしくは今の学生以上に)勉強しないと、いざというときに彼らの防波堤になれない。うわー大変だ。がんばろう。